その時のために


ああ髪を切ろう、と思い立ったのは
君のあの見晴らしのいい部屋から
東京タワーを見たことを思い出した時だった


二人で並んでベランダに出て
甘いお酒を入れたグラスをひとつ持って
二人で飲みあいながら

あの日はライターがなかなかつかない位
風が強い日だった


寒い寒いと肩を寄せ合いながら
遠くに見える普遍的な赤を眺めていた


君が私の髪に触れる
優しくやわらかく髪に触れる

長いキスをして目を開くと
遠くの赤はもう消えていて
二人でおおはしゃぎして笑った


懐かしいあの冬のはじまり
君と煙草とアルコールのにおい




いま、



春が始まろうとしてる
君のいない暖かい春

この日差しに長い髪は似合わないから
君が触れた感触を消さなきゃいけないから


そうしてきれいになった私を見て
私をふった君を後悔させなきゃいけないんだから



バイバイまたね


2008/3/9

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