宛先不明




あの夜君からもらった手紙を
今もまだ捨てられずに三年がたちました


群青の色をした夜空のしたで
君が差し出した真っ白な便箋は
君の細くて長い指に絡みつくようで
一瞬受け取るのをためらったことが
まるで昨日のことのようです

はにかむ君の隣で
私もうつむきながら微笑んでいられると
ただ純粋に信じていられたあの頃を
今はいとしく
すこし寂しく
思い出すことができます

君はもう私の隣にはいないし
多分これからも私たちの運命が交差することはないでしょう
わかっています
小さな希望なんて捨てた方がいいことも
とっくの昔に気づいています


それでも、と涙をこらえてしまうのは
多分この手紙のせいでしょう
眠れぬ夜はこの手紙を開きます
そして、妙に角ばった君の文字をなぞるのです

それで眠れることもあるし
さらに眠れなくなることだってあるのだけど
後者の方が、断然多いのだけど




あの夜の君が、そこにはいるのです
あかるいカフェの前で待ち合わせた君が
まだそこにたたずんでいるのです

この便箋の色と同じくらい白い指の君


歌うように煙草を吸っていた君







渡せなかった返事は
私の机にまだ、眠ったまま、なのですよ?


Writer's Comment

今も好きだよ、と
本当は伝えたかったのかもしれません

後の祭りなのですがね?


2006/10/26

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