フラッシュ
薄いてのひらが
私に与えられたすべてのような
そんな風な気がしてた
数年前のあの真夜中に
きみとは全然違うあのひとを
私は一生懸命愛してた
困るくらいにやさしいところだけ
きみとあのひとは
そっくりだった
私のはだかの胸の上で眠ってる
きみのやわらかい髪の毛
右手ですきながら
残酷な私は
あのひとを思い出してた
あのひの夜中
こんな風にためらいながら
私はあのひとの茶色い髪をなでていた
私の右手はなにも
なにもかわってないのにね
汗ばんだきみの首筋に
くちびるを押しあてて
ただ私は
いまもいままでも
夢だけを見ていた気がしたんだ