李歐


 人間模様を描かせたらやっぱり高村薫だなあと思える一品であることは間違いない。そもそも、それがテーマであると言っていいと思う。「わが手に拳銃を」を読んでいないのでどう違うかは分からないが、流石だ。

 主人公、吉田一彰と美貌の殺し屋李歐との友情を書いた物。それそのものがテーマであり、書かせたら巧い。彼女らしさは十分だ。李歐はあくまでも自分のやりたいことをやり遂げる為に。基本的にはただそれだけで、一彰がいるからどうか〜という訳ではない。あくまでも年月を越えても冷めない、本当の友情を描いている。斬新で、李歐には共感を覚えたりもするかもしれない。

 桜がストーリーをさりげなく演出している。儚く美しく、誰にでも共感を寄せられる日本の春の代名詞。一彰の過去にも現在にも、おそらくは未来にも咲き続けているだろう桜。李歐も桜に魅せられている一人であり、桜の見られる頃に帰ってきた夢みたいなものを一彰は見てしまうほど。それはそれで会いたいと言う気持ちがやけに強いから、でもあるが。

 これは女性だから書けたのだろうか、とも読み終えて考えてみる。文章には男勝りでもあるが敦子や咲子の心理描写は女性特有と言えばそのような。常に何かと淋しさが感じられる。一彰は女性以上に李歐に惚れているような比較までしてしまうのだが。女性軍は淋しいな、今回は。そう考えたらやはり女性だから男に対する女の心理描写は秀逸なのかもしれない。いや、そうと言い切ってしまってもいいかな。

 最後はきっちり終わらせてくれる。2人とも最後まで一彰らしいし、李歐らしい。


2003/12/16

長編

初版発行
1999/2(講談社文庫)

※「わが手に拳銃を」を下敷きに書かれた文庫オリジナル。

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