マークスの山


 洋楽を聴きながら読書をするのがマイブームなんだが読み終えたときにかかっていた曲がBryan Adamsの「Back to you」だったんだが、「貴方へ戻る」という直訳をみたり曲を聴いていたりしたら小説とマッチして切なくなった。クライマックスもそうだが、最初のシーンでも当てはまる箇所があると思う。そりゃあ、個人的にだが。

 人物の演出。これが光ったんじゃないかと。合田、佐藤、マークス、高木真知子。合田は主人公として警部補という重たい看板を背負い悪戦苦闘しつつも根性でやってのける凄さ。佐藤も長年警官としてやっている重責を最後は感じたと言っていいのだろうか。佐藤のような芯から警官をやっていく人物は今どれほどいるだろうか。個人的には好きなキャラである。マークスと、そして重要な高木真知子を生み出したことがこの作品の大成にあるかな。青の炎の櫛森秀一じゃないが、マークスにも不甲斐なさに似た切なさを持っているように思う。暗い山と明るい山が行き来する中で頭の中にある「山」を描く。その「山」がこの小説のキーでもあるのだろうが、今から読む人はこのキーを頭に入れておきながら読み進めていくとおそらく切なくなる。

 ストーリーが半ば微妙か。強引な部分は仕方ないが、全体的にストーリーを重視してほしかった。展開の発展性は好きなんだが、薄い感じが。その分人物の演出に注いでいるようにも思う。高村らしい気もするが。

 ああ、余談ではあるが、このマークスの山の感想は「文庫」版の初版である。ネットで見た他人の感想に因れば、単行本版からはカットされた部分があるらしい。単行本版も読めば、感想は違うかもしれない。とだけ一応記しておく。まあ、それが文庫化までに10年もかかった原因の一つなんだろう。


2004/1/17

長編

初版発行
1993/3(早川書房)
2003/1(講談社文庫 上・下)

(1993年)第109回直木賞受賞
(1993年)第12回日本冒険小説協会大賞受賞

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