神の火


 主な登場人物島田浩二、江口彰彦、日野草介、高塚良の4人にはいずれも独特とした感じが発せられている。主人公は島田だが、良がいないとこの話は完結しない。
 
 内容は江口にスパイにしたてられてしまった島田が「トロイ計画」に巻き込まれてしまう。何度も死にかけてマイクロフィルムを手に入れた。その後良の目的が判明し、結局はそれを受け継ぐ形になって話は終わる。本人は決して自分自身で決めたことだと言うが、本心とは思えない。良への気持ちというか遺憾というか。

 「原発脅迫マニュアル」とまあどでかいものが話の結末につながる訳だが、あくまでも最終的には島田と日野の冒険物であり、そこが最大の魅力であるから経過には不要な箇所もある。文庫化で加筆したから尚更なのだが、ストーリーには不要でも読者としてはおいしく受け取ったつもり。あくまでも日野と江口は対立しないといけないし、島田と日野は仲が良くないといけない。そして良はひたすら自分の目標を達成しなければならない。皆が入り組んだ関係にあって皆がただすることをするだけ。小説だから作れる人間ドラマはストーリーには不要だが、面白い物だと思う。

 個人的には冒険小説は好きだし高村小説はこれを読んで更に好きになった。しかし一般受けするかどうかは分からない。不要な部分は不要だと切り捨てる人もいるだろうし、内容が固く下巻は重い部分もある。高村小説好きならば読めても最初から読めるものではない気もしないわけではないだろう。


2003/12/16

長編

初版発行
1991/8(新潮社)
1995/4(新潮文庫)
1996/8(新潮社 改訂版)

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