黄金を抱いて翔べ


 主人公の幸田ら北川、野田、春樹、モモ、ジイちゃんの銀行強盗を起こすまでのストーリー。あくまでこの小説は過程と実行。その後はない。そこが物足りなかった。高村は結局は実行を書いたらそれでよかったのかもしれないが、後日談がほしいものだ。そういうのは彼女の小説では多いようにも思うが、全体的に短かったから余計だったようにも思う。やはりボリュームがないとおもしろさは減ってしまった。だがデビューでこれを書けたら十分と言えばそうだが。読後感はそんなところだった。

 実行までの計画にあたりぶつかっていく壁、危険。死の恐怖。ある種すでに追われる立場というのはそれはそれで面白かった。サイドストーリーとしてはいい。だが、登場人物達がよく見えてこない。人の背景が薄かった。ディティールに懲りすぎ。それはそれでいいのだが、背景が薄いことで、あと目的も皆が皆しっかりとしたものがなかったから最後まで傍観者でしかこの小説は読めなかった。そのスローペースの前半に比べ、ラストの実行は一気だ。ためためて最後に一気にださせるところは高村らしい。2作目の『神の火』に似たような緊迫感が感じられる。そこでもそんなに簡単にはいかせてくれないようだ。最後までリアリティは求めているしディティールに大いに気を配っているおかげで臨場感がある。そこは最高かな。

 なんだかんだ言ってデビューでこれを書けたのは凄いものだ。ある程度完成されている。好きな人は大いに楽しめるだろう。あくまでも犯罪意識というよりは達成感を求めた男達の野望。背景こそは薄かったが存分に読ませてくれるだろう。


2003/12/16

長編

初版発行
1990/12(新潮社)
1994/1(新潮文庫)

(1990年)第3回日本推理サスペンス大賞受賞

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