ホワイトアウト


 ホワイトアウト=ガスをまとった雪が周りを覆い尽くす様子。この小説自体がホワイトアウトだ、と言うのはまあ、言い過ぎかもしれないが。氏の小説はこれが初めてだったが一気に虜になる。スピーディーさ、ストーリー性は最高だ。読む目がとまらない、ページをめくる手が止まらない。読者を飽きさせず、なおかつミステリとしても完成されている。

 死んだ友人、吉岡の婚約者が捕らわれてしまったのだから、燃えないわけもない。とにかく吉岡を安堵させたく、単独で無我夢中にテロリストに挑んでいく様は情熱性を感じさせられずにはいられない。そういう人間模様、テロリストの中で崩れていったりしていく様も濃い。心理描写も同様。富樫には何かと心打たれる箇所もある。それ故映画もヒットしたのだろう。個人的に映画を見ただけでは内容が分かりづらいと思うし、それこそ富樫のワンマンショーで好きじゃないのだが。

 スーパーマンではないがもはや同等の富樫。常人なら8キロも往復できませんよ。まあ、現実離れこそしてるものもこの場合はそうしないと読者に迷惑というかなんというか。死にかけのシーンもちらほら。スリルもあるからよけいに読まずにはいられなくなるだろう。

 内容としては、設定こそ違えど太宰治の「走れメロス」とも言えないこともない。どっちも現実離れこそしているが、認めてあげるべきかも。


2003/1/18

長編

初版発行
1995/8(新潮社)
1998/8(新潮文庫)

(1995)第17回吉川英治文学新人賞

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