GOSICKX ベルゼブブの頭蓋


 もう完結している今からすると、ちょうどこの巻がシリーズの折り返しになる。折り返しをどれだけ意識していたのかはさすがに分からないが、シリーズとしても一歩も二歩も踏み込んでいる巻だなあ、という印象は持った。GOSICKの描かれている世界や時代そのもののと、ヴィクトリカ自身にまつわる謎が少しずつ描写され始め、ストーリーにも絡んでいく様子はシリーズものを続けて読む楽しみにもつながっていると思うし、ともすればマンネリな学園ものに終わりがちなところをカバーしているのかな、という感じがした。

 副題に「ベルゼブブの頭蓋」を記されているように、舞台はリトアニアの修道院、ベルゼブブの頭蓋である。イメージとして閉鎖的というか、少なくとも市街からは離れている印象を持つ修道院という場所だが、ベルゼブブの頭蓋は独特の空間になっている・・・というお話。WW1を想起するグレート・ウォーという出来事やソヴュールの地政学的な関係性などなど。

 あらすじに書いたようにノンフィクションとフィクションの相関も描いてはいるが、少なくともこの巻では大きな影響は出てきていない。次の巻にはっきりと続く、という形になっている初めての巻でもあるので、6巻へ向けて、あるいは折り返しと書いたようにシリーズの終盤へ向けての布石という要素が非常に強い巻だった。今までは中心人物のひとりであったヴィクトリカがシナリオの設定上、この巻では登場回数が激減するのも特徴だろう。まともにしゃべり始めるのは200ページを過ぎたあたりからなのも、この巻の特徴を表している。

 あと、ミステリーというよりはサスペンスとホラーの中間を行き来するようなストーリーである。科学対オカルト、というごくごくありふれた図式を使いながら展開させていく。閉鎖的な空間を描くという意味では2巻に近いし、オカルトに近いトリックを使うのは3巻に近い。その意味では若干二番煎じの感覚もあったが、偽史との絡み合わせがあることでこれらのネタを踏み台にしているようにも思える。

 もうひとつ、ヴィクトリカ不在の時間を長く作っているのが特徴であると述べたが、それは単に久城から引き離して、久城とヴィクトリカの精神的距離を縮める過程を描くのにはとどまっていない。大人たちにがヴィクトリカについて語ることが指摘すべき点だろう。語られる存在となったヴィクトリカを、追う久城という関係性はおそらく次も続くだろうし、最後まで続いていくかも知れない。

 あとは次の6巻で、「仮面舞踏会」で偽史と小説の中の現在がどのようにリンクするか。そしてヴィクトリカが何を語り、ヴィクトリカについて何が語られるかを楽しみにしていよう。


2012/2/27

シリーズ物長編

初版
2005/12(富士見ミステリー文庫) 絶版
2010/7(角川文庫)
2011/10(角川ビーンズ文庫)

 

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