ZOO


 なんじゃこりゃ、と。ZOOとは本作の中に収められているものからタイトルをとったのだと思ったが、もう色んな話がてんこもりという意味でもZOOというのは、端的に表しているなあと思う。詳しく説明しろと言われても無理。動物園は行かないと楽しめないように、どんなに面白いとか言われても小説は読まないと楽しめない。文庫版で読んだのだが、文庫版は映画化された1と、そうでない2に分かれていて、2には単行本未収録の「むかし夕日の公園で」が収録。

 「カザリとヨーコ」はスルー。乙一らしさが一番出ているのは「Seven Rooms」だろう。まあ、全部らしいと言えばらしいがミステリーの要素、あるいはスプラッタホラーの要素。7コの部屋という密室のような密室でないような空間を作り上げ、残酷なまでに巻き込んでいく様はそれこそホラーに近いんだろうなと思う中、ラストのどんでん返し。逆転するミステリ的な巧さと、残酷さと切なさがしみこんでくる余韻。最悪の状況は作り出さないまでも、十分な辛さを味わうことになる。逆転の発想の冥利は理系にしかできないよなあとも思いながら。

 ただそれが残酷だなんて言ったら「ZOO」や「冷たい森の白い家」はどうしようもないんだが。一貫して乙一は普通の人を書くことはないというのが如実に表れている。イカレ具合が尋常じゃない。こんな人いねーよと思う中で小説だからできるという内容かも。「ZOO」はともかく「冷たい森の白い家」の映像化はしてほしくないね。よかったよかった。

 「So far そ・ふぁー」と「陽だまりの詩」はしんみりと切なく。これも乙一の持ち味。前者はタイトルの言葉遊びの割に、一定の温度を保った話。後者は、一つの死生観。一種のジレンマかもしれないが、それでも生きていく価値はあるし、生きることは悪くない。切ないと言うよりは、描き出されていく自然の描写とそれを受け取って成長していく主人公の温かさ。いたずらに切ない訳じゃないし、ひっそりと余韻を残すあたりは巧い。なんかこう、救われる。『Seraphic Blue』のクルスク家の言う死による救済とは180度違うよ。

 「血液を探せ!」はネタか?「Closet」のぼかしたようなラストはかなりぞっとする。本作の中では本格ミステリの体裁を成している作だが、それぞれが持つズレた感覚+ズレたロジック。それが醍醐味。面白いかどうかは別として。
 
 「神の言葉」ではある程度予測されたような終わり方?かな。ズレているようでいない。日常で自分という架空の存在を演じている、というのは別に珍しいことでもない。それが若干「落ちる飛行機の中で」にも尾を引いているが、これに関しては乙一が面白おかしく書き上げたという感じ。ただ、飛行機の中の異常さと、私とセールスマンの普通さをアンバランス、そしてアンバランスな材料。どうしてハイジャック犯になったのかが、なれたのかが意味不明な犯人と最後に私が対峙するシーンは傑作じゃないかと。本作の中のどれにも似ないようなものを最後にぶち込んできた。
 
 文庫版ラストのショートショート「むかし夕日の公園で」でまたどうしようもない余韻を味わった中、ZOO完結。1つ1つじっくり読んだので時間はかかったものも、乙一のジャンル訳の無意味さを実感。全てが面白い!というわけでもないのに、どこか天才肌を感じる作品集。全体性なら『GOTH』のほうがよかったが、当たりはずれはともかく本作もぜひ読んで欲しい。色んな物が味わえるという意味では乙一の入門としてもいいかもしれない。そんなお話でした。


206/6/5

短編集
(1カザリとヨーコ2血液を探せ!3陽だまりの詩4So far そ・ふぁー5冷たい森の白い家6Closet7神の言葉8ZOO9Seven Rooms10落ちる飛行機の中で11むかし夕日の公園で)

初版発行
2003/6(集英社)
2006/5(集英社文庫 1・2)

備考 文庫版の1は1,9,4,3,8を収録。2は2,5,6,7,10,11を収録。なお、11は単行本未収録。

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