夏と花火と私の死体                                                                    


 当作が初めてで勿論当作しか読んでないが、読ませ屋じゃないのかな、なんて思う。第一に飽きないからだ。スリリングなタッチで描く氏の小説は非常に世界観というか、独特なというか。これが現代の16歳の小説とは思わせない感じはそこにある。特別重苦しい訳でもない為誰でも読める。ホラーなのに怖さはない。寧ろ心理サスペンスと言った方がいい。ラストまで気になるのは、そこが貴重なホラーさなんだとも思う。ラストがあって氏の小説はできあがり、氏という世界観が生まれる感じ。

 表題作は非常に懐かしみがある。秘密基地、好きな人などなど。もう一度この頃を思い出しながら味わってもいい。近い世代の人が味わってもいい。自分はそうだし、そのころの自由奔放さを感じ取ることで自分でも懐かしさが生まれてきたり。それに加わる細かな描写でよりいっそう深く味わえる。そういう世界観を作り上げたから、16歳という年齢も感じさせない。普段読む作家とはまた違った読み方ができるのもいんじゃないかな。

 2作目は「優子」というこれも懐かしみのある。書き下ろしと言うことだが、短編だから読者はすぐ世界に呑まれてしまう。その感じは「夏と花火〜」より強かったかも。だんだん分かってきたときにラストのオチは痛いか。でもまあ、年齢は感じさせない。これもスリリングなサスペンスタッチである。ホラーといえないこともまんざらでないけれど。

 小野不由実氏の如く、この小説を読んだら氏の虜になるだろう。俺の場合は特に、か。


2003/11/29

中・短編集(1夏と花火と私の死体2優子)

初版発行
1996/10(集英社JUMP j BOOKS)
2000/5(集英社文庫)

(1996)第6回ジャンプノベル・ノンフィクション大賞受賞

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