迷宮遡行


 これを読むと貫井徳郎か、と思わせるわけだが。シナリオにおいてのトリックというのは解説でも書かれているが面白いわけだが。今回も読めなかった。
 
 迫水の妻殉子が置き手紙を残し突然失踪した。探り始めた迫水に迫る暴力団の存在。ダメージを追いつつ警察官のも兄や殉子の元職場であるバーなどから情報を探るが、余計に深みにはまっていき交錯する。

 深いなあ。どこまで行くのかと思ったんだが終盤でようやく伏線がつながり始めた。最終的な面白味は本当に終盤にあるわけだが。結婚したのに籍を入れなかった殉子。どんな理由を踏まえて迫水を籍を入れたくなかったのだろう。単純に夫婦別姓にこだわりたいというのは、また別だ。

 語り手おれ、である迫水が本作では獅子奮迅している。最終的には命をも省みなくなっているわけで妻より友人を大切に捕らえてしまうところは人間味も感じた。同じ場面に立ってみればそりゃそうだろう。あとは度胸があるかどうかな訳だが。

 自身2作目である「烙印」を元に書き下ろされたのが本作だがあらすじを見ていると全く違う。「烙印」では迫水の妻が投身自殺ということになっている。そうなれば本作の場合は全く別のものになるわけかと思うと烙印もそれ相応に面白いんだろうなあ。

 本作は「光と影の誘惑」に収録の「二十四話の目撃者」のタッチに似るところがある。だからといって全く読めないわけでもなんでもなく面白いんだこれは。ラストも十分に余韻を残してくれた。そこは貫井らしい。


2004/6/8

長編

初版発行
2000/10(新潮文庫)

備考 2作目である「烙印」を下敷きにした書き下ろし

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