失踪症候群


 痛烈。読み終わって何かと痛いと感じさせられる。貫井徳郎らしいと言えばらしいのだが。誘拐症候群のほうを先に読んだが、エンターティンメント色はこちらのほうが強い。
 
 警視庁人事二課所属の環は、上司から若者の失踪について相談を受ける。環は即座にその共通点を見つけチームを集める。集まったメンバーは私立探偵の原田、托鉢僧の武藤、肉体労働者の倉持。3人それぞれが若者を追い続けた結果たどり着いた事実は、戸籍が変わっていたことだった。

 ミステリーらしい要素だが、バンドやドラッグ、原田をメインとした人間ドラマなど、エンターティンメント色の強い仕上がりとなっている。誘拐症候群同様テンポも速く読みやすいのが魅力。惹きつけられたら止まらない。

 若者はそれぞれ自由を求めて失踪した。自分の姿さえも殆ど消してしまって。それでも自由などは掴めるはずがない。自分自身を証明する手だてはなくとも、自分はあくまでも自分である。他人に成り代わって生きていこうとも、そううまくはいかない。

 若者失踪の種はあるバンドにある。失踪者リストに、その元メンバーの名前も。そしてその若者も、また何かをやらかしていた。結構転々とする展開におも面白みがあるとともに、最後はオチもある。誘拐症候群は何かと武藤メインだったが、今回は原田メインの人間ドラマにもなっている。というか、原田以外の3人の経歴や人間関係などは殆ど明らかにされていない。逆に原田だけを的に絞って、それさえもミステリーのネタとしてこの作は仕上がっている。終わり方は痛烈だった。

 何かと貫井らしさがあるが、他の作とはちょっと違う貫井も味わえる症候群シリーズ。殺人症候群も近いうちに読みたい。


2004/3/7

長編

初版発行
1995/11(双葉社)
1998/3(双葉文庫)

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