朝霧


 シリーズ五作目。一作目しか読んでない自分でとんで本作を読んだんだけど支障ないかな、と思う。まあ、シリーズ読んでいればもっと面白くなる気はするけれど。
 
 出版社に勤めるようになった私。それに関連した三編が収められている。「山眠る」は俳句を「走り来るもの」は終わりを読者にゆだねる風に書くリドル・ストーリーについて、表題作「朝霧」は祖父の謎めいた暗号について。大学時代の友人だった正ちゃんや江美がここで出てくる。

 最初の「山眠る」は小学校時代の俳句好きで自分も書く校長先生が俳句を書くのをやめる、と。それと大量に買った本の理由は。「走り来るもの」ではあるショート・ストーリーの結末をどう解くか。一番ミステリーらしいのは表題作である「朝霧」最初から読んでいけば解き方が分かるし、私もまあそのうち気付くわけだが。

 全体的にスッキリ感がいい。相変わらずではあるのだろうが。ミステリーということに固執せず日常というのは穏やかでゆったりとしている。あんまりらしくない口調の私だったり円紫師匠だったり文体だったり好き嫌いが分かれるような北村のこのシリーズなんだが。本書は面白かった。一作目と比べるとやっぱ違うというのは作家生活を積んできたからでもあるかな。

 「朝霧」の終わらせ方がしんみりさせられるんだ。日記読みつつああそうなんだと思うとどうも切ない。個人的に思ったのだが乙一っぽさもあったりするかな。「山眠る」はまとめかたが秀逸。「走り来るもの」では変な安心感が得られる。

 のんびりしたいときに読めばいいんだ。このシリーズものはそう思わせる。


2004/6/15

短編集(1山眠る2走り来るもの3朝霧)

初版発行
1998/4(創元クライム・クラブ)
2004/4(創元推理文庫)

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