秋の花


 私シリーズをこれを含め4冊読んだ。あと1冊で完全制覇だが近くの書店には売っていない。創元推理文庫というマイナーな立場にあるからだろう。「朝霧」は初版のときこそ平積みされていたが今は気配もない。俺が手に取ったときはその時点で最後の1冊だった。貫井徳郎は置いてあるのに、と突っ込んでもどうしようもないか。

 マイナーには違いないはずなのに、なんでこうしんみりさせられるんだろう。いやまあマイナーにしろメジャーにしろ、上手い物は上手いし下手な物は下手なのである。話題作だからいい、という流れではあるが主観的に見ると大抵の話題作は本を普段読まない人の本だと思っている。個人的にこれは好いている。映画は見てないが映画で出せるシーンより出せないシーンのほうがおそらく多いことだろう。

 さて本書は明らかに玄人向けに書かれた本だろうな。というかこればかりは詳しく書けない。書きすぎると面白味が減ってしまう。一つの死と、一つの生を私は改めて見ることになる。これはシリーズものはじめての長編で初めて死者がでる作である。読後感は言うまでもあるまい。

 文化祭の準備中。幼なじみの真理子と利恵が残って準備している中、真理子が屋上から転落死してしまう。片方だけ脱げた靴。取りあえず事故として処理されたが、私は核心を掴むため探るが。

 私の後輩で死んでしまった真理子。生き残った利恵。どちらに感情移入すべきなのだろう。誰にどのように思えばいいのだろう。正ちゃんは序盤から、江美ちゃんはちょっとだけだが終盤登場する。私の思い描く結論と他の2人はまた違う。私は、どうしても疑心暗鬼になってしまう。言うまでもなく当然だろう。不可解な色は隠せないから。現実とはそういうものだと私に吹きつける。

 明らかに玄人向けであり、今までのシリーズものとは変わった趣向。玄人と言ってもまあ、素人ではない限り読める作だとは思う。ファンは受け入れられるだろうか。俺は、現実的に突いた本作とそういう冒険をした作家を評価したいが。加えて、タイトルはいつにも増して上手いな。

 酷なのだ。誰にとってもこの死は酷なのだ。そして読者の俺にも酷だった。出来は何度も言うが評価したい。読後、パタリと本を閉じ、息をついた。


2004/7/8

長編

初版発行
1991/2(東京創元社 黄金の13)
1997/2(創元推理文庫)

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