光源


 ただ淡々と映画を制作する話。こうもリアルに書いてはいるのだが、あまり好きになれない。
 
 藪内の持っていた叔父の古い写真をもとに映画を作ることに。その藪内は監督。優子のプロデュース。有村のカメラマン。主演俳優は今売れている高見。共演はヌード写真集で売れている元アイドル佐和。撮影は順調に進むかと思われたが。

 淡々に撮影の情景を順を追って書いている。高見は自分の思い通りにいかず降板を持ちかけたり、藪内に殴られたり。有村は佐和に特殊な感情を抱いてしまったり。優子は怒ったり。多視点から見る撮影の様子は一人一人の思いとは全く違うもの。それが当たり前のようにストーリーは進む。ストーリーというが、殆どシナリオはない。心理描写や人物造形もよく感情移入はしやすいが、ストーリーに深みはなく、やや物足りなかった。

 かつて誰も読んだことのない小説。そういう風に言われているらしいが、確かにこういう小説は読んだことがない。展開は読めなく、小説は終わってもストーリーが終わった訳じゃない中途半端な小説。結局どうなっていったかは読者に任されるのだろうか。リアリティが面白く早く読めたが、本作は良作とは言いにくい。

 勿論意見は別れるだろうが、好きになれない桐野小説であった。


2004/3/29

長編

初版発行
2000/9(文藝春秋)
2003/10(文春文庫)

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