水の眠り 灰の夢


 桐野夏生はデビュー作こそイマイチだったがこれはなかなか面白い。前半と後半の感想が違ってきた。中盤からはハイペースに読ませてくれる。伏線がつながってきたときは面白い。書き方は東野圭吾のようなタイプだろうか。ハードボイルドともあまり思えない。非常に読みやすく面白い小説だった。
 
 お馴染みの探偵、村野ミロシリーズの番外編。義父の村野善三、通称村善が主人公。今は名もさえ聞かないが、「トップ屋」として週刊誌に懸ける男のストーリー。友人の後藤はそれもまた面白い。非常に人間性豊かな主人公、村善とのやりとり、その他でも台詞が面白かった。その村善が女子高生殺人の容疑にされてしまい、自分でその真相を探る羽目に。会社ともほぼ無関係になってしまい心理状態は最悪に。そのドロドロ感を上手に書いている。その女子高生「タキ」を夢で見たときも、切ない。心理描写はそれほど細かくないが内部描写が巧いので、それで十分心理もとれてくるのは不思議だ。
 
 複雑な人間関係があり、最終的に犯人を見つけることになる。読み終わって改めて反芻してみると面白かった。伏線がつながってきて、人間関係を整理したときにそう思った。読者を、村善も悩ませ、騙せて。終盤は二転三転しすぎている。ページ数が残り少なくなるに従ってその手が速くなるのが面白かった。ラストは、ちょっと残念だ。酷な気がする。それは、そういう現実。リアリティを求めたからああなったのだろう。やはりちょっと残念。酷であった。
 
 女性を描くのが巧いと聞いたことがあるが、後藤のように男でも十分巧く描けている。非常に表現豊かで面白い作家だ。


2004/2/13

長編

初版発行
1995/10(文春エンターテイメント)
1998/10(文春文庫)

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