パラレルワールド・ラブストーリー


 まずテーマが面白い。話も面白いが。読み始めてある程度しないと分からないが過去の部分である「SCENE」と現在の交錯。崇史は何をしていたのだろう。友人の智彦と恋人だった麻由子の存在。大学時代に付き合っていた夏江が誰なのか。崇史は忘れている。その事実が、彼を焦らせる。

 パラレルワールド、亜世界。そんなタイトルで主人公の崇史もリアリティ工学なる会社に勤めているので、素人には近寄りにくい。でもそんなキツイテーマな割にミステリーらしく読んでいるとラストが気になって一気に読んだ。

 崇史の欲のままのシナリオというのは読めばほぼすぐ分かる。智彦がちょっとあれんあおだが。文庫版の裏にもそれじみたことは書かれている。理由が分からないのは崇史も読者もなので難しい。それはそれで余計に複雑になっていく。麻由子も、どうしたらいいのかと。細かい心境は計り知れない。それを知ることのない智彦。

 テーマが面白いけどタイトルに反して痛い話だ。逆に文庫版の表紙が合っている。読み終えてふと目を閉じた。泣ける話ではないが悲しいかな、どこまで酷なんだろう。

 悪いのは崇史なのだが、彼を責めていいものか。どこまで責めるのか。読了したら微妙な感想を抱くに違いない。智彦は可哀相に見えるが、本人はそう思っていないのだから。

 ふとMr.Childrenの「Tomorrow never knows」のあるフレーズを思い出した。再読は容易にはできまい。


2004/6/19

長編

初版発行
1995/2(中央公論社)
1997/2(中央公論社 C・Novels)
1998/3(講談社文庫)

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